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敵の設計

本ドキュメントは振る舞い仕様(プレイヤーから観測できるルール)のみを定義する。 用語の正式な定義は 用語集、プレイヤー側のルールは バトルシステム。敵の作用が従う共通文法は 効果システム が持つ。

設計の出発点​

敵は数直線の上に存在する。 敵をHPと攻撃力だけを持つ壁として扱うと、このゲームで最も重要な軸(刻)が敵と無関係になり、盤面の半分が死ぬ。

そこで敵を、数直線上の一点に立つ存在として定義する。この点を**座(ざ)**と呼ぶ(ADR-0024)。

斬るのはページ。跨ぎが消すのは、敵の手のほうである。

敵の変数と作用​

敵の Intent と特性は、ページの作用と同じ6項の文法(対象変数・演算・基準値・値の寿命・発動タイミング・繰り返し範囲)で表現する(ADR-0032)。敵専用の記法は持たない。歩の使用量に倍率をかけるような作用は、カード側の対象変数(歩の支払い)へそのまま乗る。

Intent と特性の切り分け​

「Intent 列の要素かどうか」が唯一の判定基準である。 予告の有無は、この判定に使わない。

Intent特性
定義敵が持つ「作用の順序付き列」の要素Intent 列に属さない作用
跨ぎで消せるか消せる。 列の先頭から1つずつ消せない
予告常に予告される個別に決める
例攻撃、白紙化座の移動(予告される)、不動・加速・1発ごとの軽減(予告されない)

Intent 列はページの面が持つ作用列の敵側の対応物である。攻撃回数という変数が存在せず列の長さがそれを表すのと同じく、Intent の個数という変数は存在せず、Intent 列の長さがそれを表す。

発動タイミングの「常時」は、効果システムの既定どおり補正専用である。特性かどうかの判定にこの区分は使わない — 座の移動のように、常時ではない発動タイミングを持つ特性も存在する。

敵が持つ・参照する変数​

保有者変数備考
敵座現在値。数直線上の一点
敵Intent 列作用の順序付き列。対象変数そのものではない
敵封鎖点の集合数直線上の通行不能点。時限で消える(下記)
敵歩の回復量への補正プレイヤーの歩の回復量に対する加算・乗算補正
敵歩の支払い倍率プレイヤーの歩の支払いに対する乗算補正
ページ面の記入状態白紙化専用の代入対象(効果システム)

行動選択​

Intent 列は、ターンごとに敵の候補プールから抽選して生成する。前ターンの列は引き継がない(ADR-0034)。

  • 各敵は、複数種の Intent(威力・種類の異なる攻撃バリエーション、腐食型なら白紙化 Intent を含む)からなる候補プールを持つ
  • そのターンの抽選個数(基準個数 + エスカレーションによる増分)ぶんを、候補プールからシード付き乱数(ADR-0013)で独立に抽選する。エスカレーションが増やすのは個数だけであり、候補プールの中身にも威力にも関与しない
  • 列の順序は、既定では抽選順(ランダム)である。 重いものを先頭に置いて1回の跨ぎで報いる、あるいは奥に置いて跨ぎを強要するといった意図的な順序付けをしたい敵は、抽選後に並べ替えるルールを個別に持ってよい
  • 座が移動する類型は、同じターンに移動先も決める。追走型はプレイヤーの刻へ固定歩数(速度パラメータ)で決定論的に近づき、乱数は使わない。遊撃型は数直線全域から移動先を毎ターン乱数で抽選する
  • 敵AIが参照してよいプレイヤーの状態は刻の位置のみである。 手札・残りHP・山札の中身は参照しない。参照するほど「賢く」なるが、「プレイヤーが敵を読む」という一方向の読み合いが崩れる
  • 全ての敵は共通のAIアルゴリズムに、敵ごとのデータパラメータ(座の類型・候補プール・速度など)を与えることで表現する。敵専用のAIコードは持たない

乱数はプレイヤーの意思決定より前、予兆の時点で解決済みである。 プレイヤーが跨ぎの回数を数える対象は、常に予兆で見えている確定済みの列と移動先であり、乱数を使っていること自体はターン開始後の予測可能性に影響しない。

予兆​

ターン開始時、敵はその Intent 列と、予告される特性(座の移動など)を提示する。

予告内容意味
Intent 列そのターンに実行する作用の列。攻撃・白紙化などが並ぶ
座の移動座が動く敵の場合、移動先を予告する(特性)
封鎖点の生成その敵が封鎖点を生む場合、生成位置を予告する(特性)

予告された行動は、プレイヤーがターン終了を宣言した直後に実行される。 プレイヤーはこの予告を見た上で、そのターンにどう動くかを決める。

跨ぎ​

プレイヤーが座を1回跨ぐたびに、Intent 列の先頭から1個消える。

跨いだとは、あるページをプレイした際、直前の刻と新しい刻が座を挟むことをいう。座の上にちょうど止まった場合は跨いだことにならない。

座 = 42

刻 36 → 44 をプレイ … 36 < 42 < 44 → 跨いだ ✓
刻 44 → 22 をプレイ … 22 < 42 < 44 → 跨いだ ✓(向きは関係ない)
刻 30 → 36 をプレイ … どちらも 42 未満 → 跨いでいない
刻 30 → 42 をプレイ … 座の上で停止 → 跨いでいない

1ターンに何回跨いでもよい。 跨ぎ回数の上限は設けない。歩が実質的な上限になる。

何が跨ぎを制限するか​

跨ぐには座を挟む2つの銘が手札にあることと、その往復ぶんの歩が要る。同じページは1回しか出せないため、跨ぎ回数は次の3つで決まる。

要素効き方
歩往復の総距離を払えるか
手札にある、座を挟んで交互に並ぶページの枚数何回折り返せるか
ドローの供給その組み合わせが手に入るか。ドロー枚数を足す作用が跨ぎ回数を直接押し上げる

したがって:

  • 銘が座の近くに密集したデッキは、安く何度も跨げる(1往復あたりの歩が小さい)。ただし移動量が細切れになり、移動量に比例する攻撃が伸びない = 耐久
  • 銘が極端なデッキは、1回の跨ぎで歩を使い切る。ただし1枚あたりの移動量が大きく、1撃が重い = 速攻

エスカレーションが Intent を増やし続けるため、耐久側にも期限がある。

敵にダメージが入る条件​

プレイしたページの効果に従う。跨いだかどうかとは無関係である。

跨ぎは攻撃の発動条件ではない(ADR-0024)。座を一度も跨がないターンでも、未来面の攻撃効果は通常どおり敵に入る。実際に入る量は、そのページの作用と、綻びの累積による攻撃倍率で決まる(効果システム)。

跨ぎを攻撃の条件にすると、銘が極端なデッキが敵を一切殴れなくなる。 座を跨ぐには座を挟む2つの銘が要り、極端なデッキではその往復距離が歩を超えるためである。幅を持たない一点に対しては「踏み込む」ことができず、跨ぐしかない。

防御​

ターン終了時、|刻 − 座| に比例した防御を得る。方向は関係ない。

防御はそのターン限りであり、敵の行動処理で消費され、残っても持ち越されない。

防御が消費対象にするのは、HP を減らす Intent(被弾)だけである。 白紙化はこの意味での被弾ではないため、防御では防げない(下記)。

これにより、1ターンの理想形は「跨いで、跨いで、最後に座から遠く離れて終わる」になる。 ただし跨ぎ回数と最終距離は同じ歩を奪い合うため、両立には手札の銘の並びが要る。引き運が、そのまま踏み込みのリスクになる。

エスカレーション​

ステージ内で経過したターン数が増えるほど、Intent 列が伸びる。

攻撃力ではなく個数を増やすのは、プレイヤーが「あと何回跨げば足りるか」を数えられるようにするためである(ADR-0024)。エスカレーションの速度そのものは特性(Intent 列の外)であり、加速するとこの伸びが速くなる。

列の中身(何が抽選されるか)はエスカレーションと無関係に決まる(行動選択、ADR-0034)。エスカレーションが動かすのは抽選個数だけである。

  • エスカレーションはステージ開始時にリセットされる
  • 増加カーブ・上限は バランス で定義する

これが唯一のタイマーである。 プレイのコストはHPではなく歩なので(ADR-0022)、長引かせること自体の代償はエスカレーションだけが担っている。

白紙化​

敵は、ページの発動面を一時的に奪う Intent を持てる(ADR-0033)。

  • 対象領域は白紙化 Intent ごとに指定する(手札/山札/捨て札/合算)。 効果システムがすでに持つ領域の軸をそのまま使う。同じ敵が複数の白紙化 Intent を持つ場合、それぞれが別の領域を対象にしてよい。選んだ領域内からランダムに1枚を選び、そのプレイヤーの現在の刻に対して発動する側の面が白紙に戻る
  • すでに白紙の面が選ばれた場合、その Intent は不発になる
  • 他の Intent と同様、跨ぐことで列の先頭から消せる。 被弾軽減の防御はこの Intent には効かない — 唯一の対抗手段は跨ぎであり、これは対象領域に関わらず機能する
  • 白紙化でデッキの枚数は変わらない。 白紙化された面は(手札にあれば)ペンで書き込めば元に戻る。ページを永久に失わせる操作は「破る」だけであり、それを選ぶのは常にプレイヤーである(柱4)

対象領域が、その白紙化 Intent の個性になる。 発動すると、対象領域によらず、どのページのどの面が白紙化されたかを UI がポップアップで通知する(バトル画面)。したがって「見えない喪失」にはならない。ただしペンは手札のページのみが対象のため、山札・捨て札を対象にした Intent は、その面を引くまで書き込みで直せない — この「直せるまでの遠さ」が、対象領域を選ぶ意味になる。

敵の類型​

敵の個性は「座をどこに置くか」と「Intent 列をどう積むか」の2軸で表現する。

第1幕に登場する敵の具体的な種別・数・登場順は バランス で定義する。

座の置き方​

類型座の置き方プレイヤーへの意味
中庸型数直線の中央付近に固定歴史ページの銘のレンジの中に座がある。 中くらいの銘だけで安く何度も跨げる = 耐久ビルドが最も得意とする敵
高所型数直線の高い位置に固定座を挟むには高い側の極端な銘(神話)が要る。中くらいの銘しかないデッキは一度も跨げない
深部型数直線の低い位置に固定座を挟むには低い側の極端な銘(神話)が要る。同上
追走型毎ターン、プレイヤーの刻へ固定歩数(速度)で近づく(決定論・乱数なし)距離=防御なので、放置すると守れなくなる。逃げ続けるか、跨いで振り切るかを迫られる
遊撃型毎ターン、数直線全域からランダムに移動する(予兆で移動先を予告)手札の銘の組み合わせを毎ターン組み直す必要がある。読み合いが最も濃い

Intent 列の積み方​

類型Intent 列プレイヤーへの意味
重砲型個数が少なく、1発が重い1回跨ぐだけで被害が大きく減る。跨ぎの価値が最大化される
連射型個数が多く、1発が軽い全部は消せない。防御で受ける前提になり、最終距離のほうが重要になる
加速型エスカレーション(特性)が速い短期決戦を強いる。長引かせるほど跨ぎが追いつかなくなる
腐食型Intent 列に白紙化を含む攻撃だけでなく手札の質でも圧をかける。跨ぎの価値は攻撃と共有される

この2軸を掛け合わせることで、攻撃力の数字を変えるだけでは作れない多様性が生まれる。 「高所型 × 連射型」は、極端な銘を持っていないと一度も跨げず、跨げても全部は消せない敵になる。

座の位置が持つ戦略的意味​

座の位置は、プレイヤーのどのビルドが機能するかを直接決めている(ADR-0029)。

座の位置跨ぐのに要る銘苦しむデッキ
中央付近中くらい(歴史)神話に寄せた速攻デッキ。極端な銘同士の往復が歩を超え、跨げない
高い/低いその側の極端(神話)歴史に寄せた耐久デッキ。中くらいの銘では座を挟めない

耐久ビルドは「中央に座を持つ敵に強く、端に座を持つ敵に弱い」。 座の配置が、そのままステージごとの相性になる。

加えて、刻を大きく動かすと手札の発動面が切り替わる。片面しか書かれていないページが多いデッキほど、座の位置に振り回される(ADR-0025)。「攻撃力が高い敵」より「自分のビルドが噛み合わない座を持つ敵」の方が怖い、という設計ができる。

付随効果(拡張ポイント)​

類型に加えて、敵ごとの特殊な振る舞いを持たせられる。付随効果はプロトタイプのスコープ外である(PRD スコープ境界)。ここに記録しているのは、類型の設計が拡張を阻んでいないことを示すためである。いずれも特性(Intent 列の外)として表現する。

効果内容
押し込みターン終了時、プレイヤーの刻を強制的に移動させる
重石プレイヤーの歩の回復量を減らす
封鎖数直線上に封鎖点を生成し、片方向を通行不能にする。時限式 — 生成された時点で寿命(残りnターン)を持ち、それが尽きると自然に消える。跨ぎでは消せない
加速エスカレーションを通常より速く進める
不動跨ぎで消せる Intent の個数に上限をかける

跨ぎを封じる付随効果(不動・封鎖)は、他を弱くして釣り合わせる。 跨ぎはプレイヤーの唯一の能動的な防御手段であり、無条件に制限すると理不尽になる。攻撃力を下げるか、HPを下げて短期決戦にするか、封鎖であれば寿命を短く保つ。

敵のパラメータ​

各敵は以下を持つ。具体値は バランス と data/ 側のデータで定義する。

パラメータ説明
HP0にするとステージクリア
突破ラインそのステージ中の綻び上昇量がこの値に達してもステージクリア
座の生成規則類型(位置・移動の有無)。追走型は1ターンの固定移動量(速度)も持つ
Intent 候補プールターンごとの抽選対象となる Intent の集合(攻撃バリエーション・白紙化などの内訳と、それぞれの威力)。白紙化 Intent を含む場合は、その Intent ごとに対象領域(手札/山札/捨て札/合算)も指定する。抽選個数は基準個数 + エスカレーション増分(行動選択、ADR-0034)
エスカレーションカーブターン経過に対する Intent 列の伸び方
封鎖点の生成規則使用する場合。生成タイミングと寿命(nターン)
付随効果任意

ステージ構成​

1つのマップマス(歴史/神話)につき、敵1体との戦闘を1ステージとする(ADR-0006)。エスカレーションがリセットされる単位も、このステージである。

敵がしないこと​

敵はデッキからページを永久に除去しない。 白紙化は発動する面を一時的に奪うだけであり、ペンで書き込めば元に戻る。デッキが痩せるのは、プレイヤーが「破る」を選んだときだけである(柱4、ADR-0033)。

加えて、敵の作用は次の対象に触れない。

禁止対象理由
通貨(戦闘中・ステージクリア報酬とも)敵に作用させない(ADR-0031)
ペン/破るの残り回数柱4 の勝ち筋を敵が潰せてしまうため
Intent 列そのものの並び替え・追加プレイヤーが跨ぎで数えられる前提を壊すうえ、意味のある効果を作りにくい

関連​

Implementation Notes​