デザインピラー
このドキュメントは「何を面白さの核と決めたか」を宣言する。個別のルールではなく、ルールを追加・削除・調整するときの判断基準として使う。 迷ったときは「その案はどの柱を強くするか。どの柱を弱めるか」を問うこと。
面白さの核は2つである
全ての柱は、この2つを支えるために存在する。
- デッキを組み上げていく楽しみ
- ページを破って永続効果を得る代わりに、そのページを二度と使えなくなるジレンマ
ルールを1本増やす前に、それがこの2つのどちらを強くするかを言えること。 言えないなら、それはルールではなくカードの効果として書くべきである。
柱の番号は、ADR と同じく一度振ったら再利用しない。 廃止した柱の番号は欠番のまま残る。何が廃止されたかは、それを廃止した ADR が持つ。
柱1:時間軸は一本の数直線であり、それは主人公の一生である
このゲームの盤面は刻(とき)という一本の数直線である。刻は主人公の年齢を表し、0(誕生)から寿命まで伸びる。
- ページ(カード)は、主人公の人生の一場面。 ページに刻まれた**銘(めい)**は、その場面が起きた/起きるはずの年齢
- ページをプレイする=その年へ移動する。 刻は、プレイしたページの銘へ更新される
- 移動には歩を払う。 遠い年へ跳ぶほど高い。方向は関係ない — 未来へ登るのも過去へ降りるのも、同じ距離なら同じ値段である
- 敵もまた、この直線上の一点(座)に立っている。 敵と交戦するとは、その年を通り過ぎることである
数直線の両端は絶対の壁である。生まれる前には戻れず、寿命の先へは行けない。 この壁に恣意的な説明は要らない。
壁は敗北条件ではなく、プレイ不能として表現する(ADR-0019)。そして寿命の側の壁は動く — 哲学マスで延ばせる。銘が寿命上限を超えるページは「決して生きない年」として持てるが、壁が動くまでプレイできない。
この柱が禁じること
- 刻を単なる「コストの数字」として扱う案(例:刻を毎ターンリセットする、刻を年齢ではない抽象値にする)
- 数直線と無関係に成立する要素の追加。盤面に置くものは全て、刻の上に位置を持つべきである
- 移動コストを方向によって非対称にすること。距離だけが値段を決める
柱4:破壊が勝利条件である
主人公は世界を救う英雄ではなく、世界を作り変えようとした本物の悪である(シナリオ 参照)。ゲームメカニクスはこの立場を裏切らない。
自分の人生のページを破る
↓
綻び(因果の不整合)が上がる
↓
綻びが敵ごとの突破ラインを超える
↓
因果の崩壊=檻の崩壊=脱獄=勝利
プレイヤーは「守り抜いて勝つ」のではなく、壊れることで勝つ。
そして、デッキからページを永久に失わせるのは、常にプレイヤー自身の選択である(ADR-0033)。敵はページの発動面を一時的に奪う(白紙化)ことはあるが、破壊はしない。デッキが痩せるのは、常にプレイヤーが「破る」を選んだからである。
綻びの代償はデッキが負う
綻びを上げて払う代償は、そのページを二度と使えないことである(ADR-0027)。綻びの値そのものがプレイヤーを脅かすことはない。
壊すほど強くなり、壊すほど手札が薄くなる。 これが面白さの核2そのものである。
この柱が禁じること
- 綻び倍率の高いページを、弱いページにすること。 焼くだけで無条件に得な札になり、ジレンマが消える。倍率が高いページは、それ自体が手放して痛いページでなければならない
- 破却効果を、そのページを失う痛みに見合わない弱さにすること
- 「デッキを綺麗に保つのが最善手」になる設計。それは柱4の逆である
柱6:刻の位置が、次に出せるページを決める
各ページは未来面と過去面を持ち、配布時点ではどちらか一方しか書かれていない(ADR-0025)。どちらの面が発動するかは、プレイした瞬間の銘と刻の関係で決まる。プレイヤーは選べない。
銘 40 / 未来面のみ記入
刻 30 で出す → 未来面 → プレイできる
刻 55 で出す → 過去面は白紙 → プレイできない
したがって、どこで刻を止めるかが、次のターンの手札の意味を決める。 無駄に動けば手札が死に、良い位置で終えれば手札が生きる。
これが「歩を使い切るのが常に得」を否定している。 歩を余らせてでも良い位置で終えることは、正当な、そしてしばしば最善の選択である。
この柱が禁じること
- プレイヤーが発動面を選べるようにすること。刻の位置が何も決めなくなり、この柱が消える
- 両面が書かれたページを安く大量に配ること。片面ページの緊張が薄まる
- 刻を自由に瞬間移動させる手段を安価に配ること
柱5:一本の予算の上で、攻めと守りが競合する
1ターンに使えるのは歩だけである(ADR-0022)。そしてこの1本の予算を、3つの用途が奪い合う。
| したいこと | 得るもの | 払うもの |
|---|---|---|
| 移動量を大きく取る | 攻撃(移動量に比例する作用) | 遠くへ跳ぶぶんの歩 |
| 座を跨ぐ | 敵の Intent が1個消える | 座を挟む往復ぶんの歩 |
| 座から離れて終わる | 防御 | 離れるぶんの歩 |
移動量を伸ばす(攻める)
↕
座を跨ぐ(Intentを消す) 一本の歩を奪い合う
↕
座から離れる(防御を得る)
跨ぎ回数を増やせば移動が細切れになり、火力が伸びず、遠くへ離れる歩も残らない。 追加ルールなしに、この三つ巴だけからターンの判断が生まれる。
跨ぎは攻撃の条件ではない
斬るのはページの効果であり、跨いだかどうかとは無関係である(ADR-0024)。跨ぎが持つ意味は Intent を消すこと、すなわち守りだけである。
これにより、銘の分布がそのままビルドの性格になる。
| デッキ | 移動量 | 跨ぎ | 性格 |
|---|---|---|---|
| 銘が密集 | 小さい | 何度もできる | 無傷だが火力が出ない(耐久) |
| 銘が極端 | 大きい | ほとんどできない | 殴られるが1枚が重い(速攻) |
この柱が禁じること
- 位置に関係なく一定量の防御を与える効果を、無条件・低コストで配ること(競合を無効化する)
- 歩を払わずに座を跨げる手段を作ること
- 歩の持ち越しを安価に配ること。「1ターン休んで次に大技」が常に成立すると、エスカレーションの圧が効かなくなる
- 跨ぎを攻撃の発動条件にすること。 銘が極端なデッキが敵を一切殴れなくなり、3つの用途の競合が2つに潰れる
柱同士の優先順位
対立したときは 柱1 > 柱4 > 柱6 > 柱5 の順で優先する。
- 柱1(時間軸=人生)はこのゲームの identity であり、これを崩す案は他の全ての利点を上回らない
- 柱4(破壊が勝利)は物語とメカニクスの結節点であり、ここが緩むと「ただのカードゲーム」になる
- 柱6(刻の位置が手札の意味を決める)は、柱1を宣言ではなくルールとして支えている
- 柱5 は経済とリズムの話であり、数値調整で代替手段を探せる余地がある
面白さの検証基準
プロトタイプが以下を満たしたとき、コアループは成功していると判断する。
- 毎ターン、跨ぐか離れるかの選択に迷いがある — 予兆の Intent を見て「今回は消しに行くか、離れて受けるか」で手が止まる
- 「歩を残してでも、ここで止まるか」で迷う — 次のターンに出せる面が変わることを見越して、あえて動かない判断が発生する
- 破りたくないページを破る瞬間がある — 永続効果のために、まだ使いたい札を焼くときの痛み
- 綻び倍率の高いページを見て、指が止まる — 「これを焼けば突破ラインに届くが、この札を失う」という誘惑と恐怖
- デッキが変わると、戦い方が変わる — 銘の分布を変えたときに、跨ぎ回数と到達距離が体感で変わる
これらが起きていないなら、数値ではなくルールの側に問題がある。